制作協力:永田康祐
「出来事」は、ある特定の時間の範囲を占めるもので、それはすぐに過ぎ去ってしまう。 固定化も物質化もされず、反復もしない。しかし、物質に刻まれた痕跡が、 そこでかつて起きた出来事の証拠としてそこに留まることがある。 物質は常に出来事の外側にあって、出来事によって物質はえぐり取られる。 えぐり取られ、失われた空間の形は出来事のかたちと反転した状態で対をなす。 ゆえに、それはある出来事が起きたことの証拠になる。 こうした物のうち、人以外の有体物による証拠を物的証拠と呼ぶ。 物的証拠は、出来事の痕跡として、どのように欠損したり傷ついているかが重要な意味を持つ。 その物自体は物語の主題にならず、そこから既に過ぎ去ってしまった、不在の出来事が物語の主題となる。
● 2014年7月 東京藝術大学美術館陳列館 「マテリアライジング展Ⅱ - 情報と物質とそのあいだ」にて展示
マテリアライジング展Ⅱ - 情報と物質とそのあいだ
1.鍵、灰皿
テーブルに置かれたディスプレイには、物理シミュレーションで鍵が落下して跳ね返る様子が映し出されている。
鍵が地面と衝突するたびに、陶器製の灰皿から音が聞こえる。
2.バール、靴
テーブルに置かれたバールにはワイヤーが取り付けられていて、一定の間隔で上下動を繰り返す。
モニターに映し出された3DCGの靴はそのバールと全く同じ動きをする。
3.ティーカップ
ティーカップに注がれる紅茶の振る舞いをシミュレーションし、
紅茶が波打ち、飛び跳ねることによって生成された面をティーカップの面として抽出。
すると、極めて限定的な条件に適したデザインのティーカップが完成する。