展覧会について/アバター

2022

この「これは谷口暁彦ではない」という展覧会は、実空間で開催されない。 バーチャルな空間に作られたCALM&PUNKギャラリーでのみ開催される。 2022年1月22日から始まり、会期の終わりを設定せず、しばらく継続される。 半年から1年ほどの時間をかけて、少しずつバーチャルなギャラリーに作品を設置し、 随時更新されていく。そうしたやり方で、過去の作品を振り返りながら、 いくつかの問題について考えてみる。

2020年の新型コロナウィルスの流行以前から、実空間での展示を必須とするようなインスタレーション形式の作品をほとんど作らなくなっていた。もっぱらヴィデオゲームの制作に用いられるunityという制作環境を使い、3Dゲームのようなバーチャルな空間に自分自身のアバターが登場する作品を作っていた。それは最終的に映像作品になったり、ゲームのようにインタラクティブにプレイできるものや、自分自身でプレイするパフォーマンスとして発表していた。まったく実空間で展示を行なっていなかったわけではないが、制作する作品の形式は、必ず展示を行わなければならないものではなくなっていた。自分自身がずっと以前から興味関心を持って調べていたネットアートやゲームアートという領域も、実空間での展示の必要性の薄い形式だったし、ネットアートに限っていえば、そもそも実空間に展示することの困難さ自体が、重要な問題として扱われてもいた。

新型コロナウィルスの流行により、それまで当たり前に行われていた実空間での活動が制限されると、美術作品の展覧会も含む、さまざまな活動をインターネット上で代替しようとする試みが行われた。僕自身も「タマビバーチャル彫刻展(多摩美術大学 彫刻学科有志、2020)」や「バーチャル避難訓練 ワークショップ(札幌文化芸術交流センター SCARTS、2021)」、「多層世界の中のもうひとつのミュージアム(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、2021)」など、オンラインでの展覧会の企画や制作に関わりながら、過去のネットアートの展示における、展覧会という形式の実験などを振り返ったりしていた。コロナ禍以前から、自分自身にとって実空間での展示の必要性が薄まっていたし、こうしたコロナ禍での活動を通じて、実空間で展示を行うこと自体が僕の中で絶対的なものでなくなってしまっていた。また、コロナ禍と無関係に、生活や仕事の環境の変化もあって、実空間での展示を実現するだけの時間や空間、その他色々なリソースを確保できないように思えた。なので、この展覧会をバーチャルな空間で行われるオンラインだけの開催として、会期終了も設定せず、テレビドラマや、小説や漫画の連載のように継ぎ足しながら更新することにした。さまざまな社会や環境の変化、自分自身の生活やリアリティの変化を踏まえ、なんとか苦し紛れに設定した方法でもある。もはや展覧会とも言えないような、どこかタガが外れた展覧会に思える。

しかし、いざこの展示をバーチャルな空間内で作り始めてみると、その作業の膨大さにすでに辟易しつつあって、実空間での展示のほうがまだ楽なように思えてくる。ともあれ、できるところまで続けてみようと思う。