イントロダクション

 Introduction

はじめに

この授業は多摩美メディア芸術コースの2年生「オルタナティブ・フォトグラフィー」の授業です。
木曜日は永田康祐先生担当で、金曜日は僕(谷口)が担当します。このサイトでは主に金曜日の授業の内容をまとめていきます。

いま、日常に溢れる様々なテクノロジーは、これまでの写真のあり方を変えつつあるかもしれません。 今、この瞬間も人が一生をかけても見ることができないくらいの量の写真が世界中からSNSにアップロードされ、一度も訪れることのない場所の写真がGoogle Streetviewには保存されています。また、ロボットや自動運転の自動車には制御のためのカメラが取り付けられ、常に周囲の環境を撮影し、機械学習のデータに基づいて状況を感知しています。このように、インターネットやデジタルテクノロジーを介して、大量の写真が存在し、様々な場所にカメラがある今の状況において、いままでの写真とは異なるものが生まれていきているように思えます。この授業では、そうした状況を前提としながら、いくつかの実践を通じて「べつの写真表現」を考えていきます。

「べつの写真表現」を考えるために

べつの写真表現を考えるためには、まずはいったん通常の写真表現をやめることが重要に思えます。
つまり、カメラを手に持って、シャッターボタンを押し、撮影された画像をプリントして壁に掛けるという、一連の手続きをまずやめてみるということです。 こうした考え方は、これまで私たちがイメージしていた「写真」の外側にある、別の可能性を探ることでもあります。

具体的には「画像検索」「機械やコンピュータのまなざし」「デスクトップ、スクリーンショット」「virtual photography / in-game photography」などをキーワードにしながら、いくつかの実践を通じて「べつの写真」の可能性を考えていきます。
そして、最終的にはなんらかの撮影装置/撮影プロセスと、それによって得られる新しい写真/イメージを最終課題として制作することを目標とします。