物的証拠
Physical Evidence
2014
「出来事」は、ある特定の時間の範囲を占めるもので、それはすぐに過ぎ去ってしまう。 固定化も物質化もされず、反復もしない。しかし、物質に刻まれた痕跡が、 そこでかつて起きた出来事の証拠としてそこに留まることがある。 物質は常に出来事の外側にあって、出来事によって物質はえぐり取られる。 えぐり取られ、失われた空間の形は出来事のかたちと反転した状態で雌型のように対をなす。 ゆえに、それはある出来事が起きたことの証拠になる。 こうした物のうち、人以外の有体物による証拠を物的証拠と呼ぶ。 物的証拠は、出来事の痕跡として、どのように欠損したり傷ついているかが重要な意味を持つ。 その物自体は物語の主題にならず、そこから既に過ぎ去ってしまった、不在の出来事が物語の主題となる。
今回の展示では、全3点のうち、「鍵、灰皿」の部分だけをピックアップし、iPadを用いて再制作した。
07-1|1.鍵、灰皿
テーブルに置かれたディスプレイには、物理シミュレーションで鍵が落下し、跳ね返る様子が映し出されている。鍵が地面と衝突するたびに、陶器製の灰皿から音が聞こえる。