【やってみる】暗号をやってみる

【やってみる】暗号をやってみる

「闇の情報デザイン」暗号、悪意、ハッキング

先ほどの「闇の情報デザイン」から続いて、実際に過去に存在した暗号を作ったり解読してみたいと思います。このプロシージャル・ポエジーという授業の中で考える、プロセスやルールにによって言葉を操作し、そこから言葉(詩)を生成するというアプローチは、暗号を作ることととても似ています。暗号は、一定のルールによって言葉を別の言葉へと変換・複号する方法のことですが、詩という観点から、暗号の技術について検討することは、新たな可能性に繋がるような気がします。

シーザー(カエサル)暗号

シーザー暗号 - Wikipedia

送信したいメッセージの、1文字ずつをアルファベットの並び順で3文字分シフトさせることでもとの文章を暗号化するというシンプルな手法です。古代ローマでシーザー(カエサル)が用いていたとされ、この名前で呼ばれるようになりました。

ヴィジュネル暗号

ヴィジュネル暗号 - Wikipedia

16世紀、フランスの外交官だったブレーズ・ド・ビジュネルが考案した暗号です。シーザー暗号の各文字のシフト数を、特定の文字列(単語)と紐づけて、その単語を復号化するための鍵として運用するような仕組みです。上のずはその際に用いられるビジュネル方陣。アルファベットの並びが1文字ずつシフトした表になっています。 図は、 「史上最強のエニグマ暗号が暴かれた日 アラン・チューリングとブレッチレーパーク」レトロハッカーズ合本第1集 より。

「HACKER」という単語を鍵として使用する際の例です。左の最初の1文字が「HACKER」となるように上記のビジュネル方陣から各行を取り出してならべ、これを換字表として用います。 例えば、「This is a Pen」 という文字列を上の換字表で変換すると上記のように文字を拾っていくことになり、「AHKC MJ H PGX」と変換・暗号化されます。復号する側は「AHKC MJ H PGX」という文字列を受け取り、「HACKER」という鍵になる言葉をもとに、同じ換字表で復号します。そうすることで「This is a Pen」 という文章を復元できます。

スキュタレー

スキュタレー - Wikipedia

古代ギリシャで用いられたとされる、古典的な暗号化の手法です。羊皮紙をある太さの筒に巻き、そこにメッセージを記述します。筒から羊皮紙を外すと、筒の太さに応じた一定の文字数の間隔で文字が置き換えられ暗号化されるという仕組みです。復号する際は、同じ太さの棒に巻きつけることで解読できるようになります。しかし、暗号の強度としてはかなり弱いので、実際には何かの認証や確認のために用いられたのではとも言われている。

ただ、スキュタレーが非常に面白いのは、巻きつける筒の形・太さによって暗号化・復号化が行われる点です。つまり、暗号化のルールや、それによって置き換えられた文字列は、筒の形・太さを内包し、表現していると言えます。以前見せた僕の作品「意味の型取りゲージ」は、このスキュタレーと似ています。

実際にやってみる 1.シーザー暗号

ダウンロード:CaesarCipher.pdf

このようなシーザー暗号を作成・復号する際に便利なシートを作成しました。暗号化するとき、復号化するときどちらでも使用できます。2人1組になって、1人は暗号を作成し、もう1人はその暗号を復号してみましょう。

実際にやってみる 2.スキュタレー

今度は、スキュタレー暗号をやってみましょう。お菓子の箱やラップの筒など、筒や箱のかたちをしたものを持ち寄ります。そこに紙テープを斜めに巻いていき、暗号を書き込みます。筒から外した紙テープを別の人と交換して、さまざまな筒や箱に巻きつけて復号化を試してみましょう。 これらを、暗号ではなく「詩」の表現として鑑賞するとき、どのような感覚になるでしょうか?ある特定の形・条件のときにだけ現れる言葉は、何か出来事や現象のように、まさにいまここで起きていることとして感じられるかもしれません。